AIが標的も分子も設計した薬が、第III相に入った
Insilico Medicine が2026年7月7日、rentosertib の第III相臨床試験を開始したと発表した。特発性肺線維症(IPF)を対象とする経口の低分子で、TNIK を標的とする。
AIが何をしたのか
「AIを使った」で済ませられない程度に、工程が分かれている。3つのプラットフォームが別々の段階で入っている。
PandaOmics — 標的の同定。 線維化組織のマルチオミクスデータ、生物学的ネットワーク解析、因果推論、パスウェイ解析、文献と特許の情報、老化関連のターゲットスコアリングを統合して TNIK を選び出した。
Chemistry42 — 分子の生成。 生成化学(generative chemistry)で低分子を作り、最適化した。
Medicine42(inClinico)— 治験の設計支援。 臨床試験の結果を予測し、プログラムを改善する用途で使われている。
つまり**「何を狙うか」と「どんな分子にするか」の両方がAI由来**であり、そのうえ治験の組み立てにも入っている。
試験の中身
第III相は前向き・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群間比較で、中国国内の47施設で320名の登録を予定している。
前段の第IIa相(GENESIS-IPF)では、安全性と忍容性が管理可能とされ、60mg 1日1回の群で努力肺活量(FVC)の平均変化が12週時点で +98.4 mL、プラセボ群は -20.3 mL だった。
なぜこれを取り上げるか
AI創薬は長らく「候補は出るが、承認された薬は無い」段階にあった。第III相は、その距離が縮んだことを示す最初の類の出来事である。
ただし第III相の開始は成功ではない。ここから読むべきなのは結果であって、開始それ自体ではない。
数字はすべて Insilico Medicine の発表に記載されているものである。