「ナビエ・ストークスが解けた」の見出しと、証明された中身がずれている
2026年9月、「AIがナビエ・ストークスを解いた」という見出しが並んだ。一次側を読むと、証明された対象は見出しと違う。
何が証明されたのか
Terence Tao が2026年9月7日に自身のブログで扱っているのは、Alpöge と Buckmaster による次の結果である。
非圧縮多孔質媒体(IPM)方程式、Boussinesq 方程式、非圧縮 Euler 方程式における、滑らかな強制項つきの有限時間爆発
ミレニアム問題は「3次元ナビエ・ストークス方程式の解の存在と滑らかさ」である。 上の3つはそれぞれ別の方程式であり、しかも「滑らかな強制項つき」という条件が付いている。
Tao は Córdoba と Martínez-Zoroa の先行研究の上に積まれたものだと位置づけている。
AIがどう使われたか
証明は Lean で形式化されている。 Tao の表現はこうである。
現代の自動形式化エージェントの時代には今や十分に実行可能なことだが、彼らの仕事は Lean でも形式化されている。今どき予想されるとおり、ここでの議論は大きくAIに支援されている。
もう一点、Tao は最初に出てきたAI生成の原稿について「数学の歴史上われわれが見た中で最悪の書き方」と書いている。その後、著者らが簡潔に磨き直して専門的な品質にした、とも書いている。
AIが出した結果を、人間が読める形にする工程が別にあるという構図がそのまま出ている。
確認できていないこと
OpenAI が同時期に「10,000のエージェントを88時間動かして解いた」と主張したと報じられているが、OpenAI の発表そのものには到達できていない(Cloudflare の保護により取得不可)。エージェント数・時間・トークン数などの数値はすべて二次情報であり、ここでは扱わない。
功績の帰属をめぐる当事者間の応酬も報じられているが、同様に一次で確認できていない。
なお Google DeepMind は2025年9月、物理情報ニューラルネットワーク(PINN)で Euler・ナビエ・ストークス・IPM・Boussinesq の不安定特異点を発見したと発表している。こちらは**「発見」であって証明ではない**と明記されており、ミレニアム問題は未解決のままだとしている。
引用は Tao のブログと DeepMind の発表に記載されているものである。